令和2年の年の暮れに私が敬愛する萩田随風先生がお亡くなりになりました。13年ほど書を教えていただきましたが、ここ7年ぐらいは筆を置かれていました。
「てくてくと こどものほうへ もどっていこう」八木重吉の詩
習っていた当時の作品も気高く美しい書でしたが、葬儀場に飾られた晩年の書は、本当に素晴らしく、先生の心があらわれた優しい書でした。
奥様とお子さん3人にその連れ添いの方3人。お孫さん7人とひ孫さん8人。お年玉をご用意しての旅立ちだったそうです。大勢のご家族に囲まれて幸せそうに眠りにつきました。私もそんな人生を歩んで行けますようにと手を合わせました。
「あかあかと 一本の道 とほりたり たまきはる 我が命なりけり」 斎藤茂吉の句
斜陽に照らされて果てなく続く一本の道。この道こそが自分の生きていく道だ。
師を亡くした歌人が自分の生きていく道を再確認した力強い独立宣言の歌です。
私も弟子の一人として、先生の名に恥じることのないよう書に向き合い、そうしていれば、空から先生が応援してくれると信じて筆を持ちたいと思います。
流水