書道の作品は、大体の場合表装して飾られます。
私の作品ももうかれこれ20年以上前からこの町の静かな静かな田舎にあるサワダ美術社の澤田宏之さんに表装をお願いしています。時には小さな紙に書いた字を家にあった小さな額に表装して貼り込むというような数百円というお仕事でも、いつも笑顔で快く丁寧にやってくださいます。
先日、車好きな私の父が何十年も前のボロボロの外車のポスターをパネルにして欲しいと依頼してきました。その車には若かりし頃からの思い入れがあるらしく、大切に保管しておいたというのです。畳んであったので折り線も白くクッキリ付き、少し引っ張れば破れてしまいそうなポスター。それをキレイに貼ってパネルを作りたいというのです。
父は高齢にはなりましたが、こういった趣味の分野にはこだわりがあり、いくつかの注文が添えられました。正直言ってなかなか厄介な仕事に思えました。
しかし恐る恐るその注文を伝えると澤田さんは「大好きな物があるって素晴らしいじゃないですか」と言って父を褒めてくれたのです。そして素晴らしい手仕事で応えてくれ、美しいパネルを作り上げてくれました。その仕上がりに父もとても満足してくれました。
人を認めて、人を褒めて、笑顔で暮らしていく。簡単そうですが、なかなか難しいことです。 でもそんな風に生きて行けたら自分も良い作品が作れるのではないかと、澤田さんを見ていて思うのです。
流水